新しい一歩は、“完璧”より“試す”から──リーン・スタートという考え方

(一社)ITC-Pro東京 代表理事 谷 巌

あるとき、新しいアイデアを思いついたとする。
そしたら、それを実現したくなる。
早速行動に移る。
まず、詳細な事業計画を作ろうとする。上司がそうしろというからだ。
それならば、良い製品にしようと、必要な機能を盛り込む。
つぎに、マーケティング調査をして裏付けをとれと言われる。
それで、何人かに製品の説明をして、「どう思いますか?」と聞いてみる。
すると、良い感触のアンケート結果が出来上がる。
ついに、製品開発をして売り出す。
そして、たいがいは失敗する。新規事業を既存事業の延長と考えているからだ。

では、具体的にどこが悪かったのだろう。大きく二つ考えられる。


一つ目は、準備をしすぎることである。
なぜなら、計画は仮説であって正解ではないからだ。
そのため、常に検証し修正して進めていく手間が必須になる。
さらに、心理的にもある程度進んでしまうとなかなか修正しづらくなる。
これを**「サンクコスト」**と呼ぶらしい。


二つ目は、顧客ニーズの把握方法である。
よくやってしまうことだが、感想を聞いてはいけない。
どう行動するかを具体的に聞くのが良いとされている。
つまり、たくさんの機能を説明されると「それはあったら便利かな」と思い、悪い感想にはならないのだが、実際に買ってまで使うとは限らないということだ。


それでは、成功に導くにはどうすればよいのだろうか。
一言でいえば、**「大きく考え、小さく始める」**である。


最初にするべきなのは事業計画ではなく、ある程度の粗さで盛り込みたい機能をいくつか考えてみることだ。
それをすべて実現するのではなく、基本機能に絞って開発したところで、少人数に使ってもらう。
すると、「こんな機能がなかったら使い物にならない」と苦情が出てくるだろう。
そこで初めて、その機能を実装する。
それの繰り返しで、完成に近づけていく。
いや、完成は永久にないかもしれない。

一方、初めに考えていたけれども苦情が出てこなかった機能は、顧客ニーズがないわけであるから、開発する必要がない。


これが、企業や新規事業を効率的にマネージメントする「リーン・スタート」という手法の骨子である。


それにしても、「おいおい、そこまでわかっているのなら、自分で新規事業を立ち上げてみせろ」と突っ込まれそうだが、ご安心あれ。
実はこれから私も、「ラストワンマイルをゼロに」というコンセプトで、新規事業を立ち上げようとしているのだ。
つまり、今年の終わりぐらいには、成功事例もしくは失敗事例をご報告できるかもしれないのである。
乞うご期待。

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