教育がすべてOJTになっていませんか?

技能伝承計画の策定及び実行支援 《具体的な進め方の流れ》

1.保有する技能の棚卸し

自社の技能をすべて洗い出します。

匠の技と言われるような高度な技能だけではなく、製造上の手法、コツなど、事業運営に必要なものはすべて洗い出すことがポイントです。併せて、誰がどうのようなスキルを持っているのかを把握するために、スキルマップの作成をします。なお、スキルマップは、個々のスキルについて、工程や製品等の別で作成しておくと把握しやすくなります。

2.伝承する技能の選定

過去の実績や今後のビジョン等から伝承すべき技能を選定します。

技能の選定には、今後のビジョンや経営戦略と整合したものであることが必要です。そのため、現場だけではなく、経営層の関与が必須となります。技能の伝承を効率よく進めていくため、十分検討した上で決定しましょう。

例 
下表のような製品構成と、今後の方針である場合、技能1,3,4,5は今後も必要となるため、優先的に承継していく必要があります。しかし、技能2は今後使わない予定であるため、承継の優先順位は低くなります。
ここで迷う場合は、経営計画や経営戦略が明確に設定できていない可能性があるため、経営計画や経営戦略を見直す必要が出てきます。その場合、経営層の関与は必須となります。

3.技能の技術化 (暗黙知の形式知化)

ここでは、主に業務を行いながら教育を行うOJTで教育するもの(OJTでしか伝えられず形に残らないもの)と、研修や自主学習等のoff-JTでスキルの上達を図るもの(文書やマニュアルといった形に残せるもの)を分けます。マニュアル類の整備を行うことによって、突然の技能者の退職による技能の喪失軽減や、OJTのみで教育を行う際の負担が軽減します。また、IT・機械設備等の発達により、人による作業を代替できるようにもなっているものもある。採算や将来を考慮し、可能なものはITや機械設備等での代替も考慮にいれるとよい場合もあります。

技能と技術の違い

技能の技術化

 

4.伝承時期の選定

継承時期の設定

技能を守っていくためには、渡す人と引き継ぐ人が必要なのは言うまでもありません。技能を次世代へ渡す方は、これから定年を迎える従業員であることが多いため、技能の伝承がどの程度の期間必要なのかを考えておく必要があります。もし、定年退職年齢にかかるようであれば、定年延長等の勤務の延長の承諾や就労条件の合意も必要となってきます。技能を引き継ぐ方は、基本的に次世代を担うような若手社員であることが多いと思いますので年齢的にはあまり問題にならないと思います。ただ、技能を渡す方の従業員が職人気質であった場合、教えることが苦手であるため、うまく技能が承継されていかない可能性があります。この場合には、コミュニケーション能力の高い従業員を引き継ぐものとして選定し、積極的に技能を引き出していくことが求められます。

ポイント

【全般】
1.技能承継に必要な期間
2.技能を渡す・引き継ぐ従業員の選定・確保

【技能を渡す側の従業員について】
1.退職時期の確認
2.継続勤務の承諾と条件設定
3.人間的な特徴の把握

【技能を引き継ぐ側の従業員について】
1.コミュニケーション能力
2.技能を渡す側の従業員との関係・相性

5.教育・評価方法の設定

ここでは技能の伝承をどのように行っていくか、その進捗を測るためにどのような評価を行うかを設定します。

教育・評価について

この場合の評価は、人事評価制度のことではなく、技能の技術化・承継が目的であるため、技能承継計画に対して、どの程度の進捗であるかで評価すべきです。基本的には、技能の技術化や技能の習熟度が基準となります。
具体的な方法の詳細について、ここでは割愛しますが、進捗には、技能の難しさ以外に、従業員双方のモチベーションが大きく関係します。技能を渡す側には、教育することにやりがいを感じられる仕組みを構築することや通常業務に加えて教育が追加されるわけですから、それが不満とならない制度や仕組みが必要です。技能を引き継ぐ側には、職人気質で何も教えてくれないからやる気をなくすといったことに対して会社全体でフォローできる仕組みを構築することや、技能を習得すれば技能者として社内掲示や表彰といったモチベーションの向上策も必要となってきます。また、最も重要なことですが、技能承継を、単に関係者だけの問題とせず、全社を上げて協力する仕組みや風土を作る必要があります。

ポイント

【全社】
1.技能承継を会社全体の課題と捉える
2.技能承継が円滑に進むような社風醸成

【技能を渡す側・引き継ぐ側の従業員について】
1.やる気の低下を防止する仕組みや制度の構築
2.モチベーションの向上する仕組みや制度の構築